技術を公開する社会的貢献

 

特許は独占権で、他人が全く利用できなくなるのだから、社会にとって害悪では?

私は、この業界に来る前は、ITエンジニアをしていましたが、その時の特許に対する印象はこうでした。

 

それでは、なぜ、国などの行政は、税金をかけてでも特許庁を虎ノ門に建てて、特許権者を保護するのでしょうか?(虎ノ門にたてるのは別の理由ですかね・・。) 

そうなんです。

 

特許を出した後に、その技術情報は、公開されるんですよね。ですので、その技術は、形式的には、パブリックドメインのものになります。

おっと、しかし、騙されてはいけません。その技術が、特許権になると・・。

当然、その特許権者に許可をもらわないと、使用ができなくなります。

 

つまり、特許権がとられなくて、技術が公開されれば、最も社会貢献になる?わけです。

2009年の出願数35万件(ほとんどが公開されるとしましょう)において、特許登録件数は19万件です。つまり、この差の16万件は、独占権のない新規技術の公開情報と考えられます(厳密には、たいしたことない技術もあるのかもしれませんが)。

とすると、かなりの新規技術が独占権が付与されずに、無料公開されており、特許制度自体は、社会の貢献になっている?と考えて良いのかなと思われます。

 

これとは逆に、一度、公開されてしまった技術は、特許を取ることができません。

いわゆる、新規性がない・・ということになり、その人が発明していないと考えられるからです。

 

ですので、特許をとりたい技術を、インターネットで公開してしまえば、理論的には、他社が権利を取ることができないのです。

そのため、他社に特許をとらせないため、特許出願をしますが、自らも特許権をとらない・・という会社があります。

 

どういう事かといいますと、特許の出願をして、その後、その技術が特許庁により公開されます。これで、この特許出願は、目的を達したとして、自らが特許権を取得するための余計なコスト(その特許の審査請求料や、特許取得のための料金)を払わない・・という会社があります。

 

たしかに、この方法で、他社の権利化を阻止することができますが、当然ながら、自ら権利を取得することはできません。

 

それなら、そもそも、特許出願しなくても、よかったのでは?と思いますよね?これは、インターネットがない昔、世の中へ技術を公開するために、雑誌に載せるなどの手間を考えれば、特許の出願をしてしまうほうが、簡単だったという慣習によるものでした。

 

しかし、今は、インターネットの世の中ですから・・。

公開のみを目的とした場合は、例えば、以下のようなサイトが利用出来るでしょう。

 

特許の公開サイト IP.COM 発明協会

意匠の公開サイト DESIGNPROTECT

 

本当に自社が特許権を取りたい技術のみを特許出願する。

そして、他社の権利化を阻むために、技術を公開するのみの目的であれば、上記のようなサイトを利用する。

 

これが、今後の適切な知財マネジメントなのではと考えます。