17 マーケティングと知的財産の関係はシンプル!?
地方のブランドや、技術的にニッチ企業を調べたいという場合、自ら探さなくても、待っているだけで、これらの情報が集まってくるのが地方の特許事務所である。通常、特許事務所は、特許庁へ特許や商標等を出願するための代理人であるが、結果的には、地方で未来の価値となる商品やサービスの情報が溢れている。そんな地方の価値あるものについて、またその価値を生み出す人達の心構えやノウハウを、公開可能な範囲で皆さんに共有できたらという想いでこのコラムを始めた。宮崎で、地域ブランドを考えたときに、最も伝えたいことは、知財の前にマーケティングの大切さについてである。ヒット商品は何かという問いに対してシンプルな考え方がある。「買う前に欲しいと思わせる力が強くて、買った後に買ってよかったと思わせる力が強いもの」とマーケターの梅澤氏が定義している。「買う前に欲しいと思わせる力」は、CMで魅力を伝えたり、良い口コミを公開する、その商品が購入予定者に期待させる力(コンセプト力)である。そして、「買った後に買ってよかったと思わせる力」は、商品を購入後に、その商品を体験して、美味しかったり、楽しかったりして、満足させる力(パフォーマンス力)である。このコンセプトとパフォーマンスの力が強い商品やサービスこそが、ヒット商品となり得る。ここで、本県を考えてみると、例えば、食べると美味しい果実や漬物が溢れているため、パフォーマンス力は強いと言えよう。しかし、まず、購入予定者に食べてもらえるかという課題があり、残念ながら、買う前に欲しいと思わせる力が充分ではない商品が多いと言えるのではないか。このコンセプト力を上げるには、商品のネーミングやパッケージのデザイン、CMの誘惑等、買う前に購入者に夢のような期待を与えるような伝える力を改善する必要があり、県のブランド推進本部等も商品デザインの指導に取組んでいる。そして、この魅力あるネーミングに対し商標権を取得したり、魅力あるパッケージのデザインに対し意匠権を取得して、このコンセプトの表現を知的財産権という独占権で守るのが知財の役割である。したがって、私のような特許事務所に来る商品は、価値のある商品の価値を長期間独占権で継続するためのものであり、価値そのものを創出しているのは、マーケティング力なのである。知財権そのものは価値あるものに付与された結果でしかない。本県においては、パフォーマンス力が高い商品が溢れているのだから、それを魅力あるものとして、しっかり伝えられるマーケティング力の更なる向上を期待したい。